秘密の地図を描こう

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 アスランが彼らに遊ばれている頃、レイは一人で車を走らせていた。
 やがて、海岸の近くで停車する。
「ご苦労様です」
 同時に人影が二つ、近づいてきた。そのうちの一人が誰かを確認しなくてもわかるのはいいことなのだろうか。
「君の方こそ、大丈夫だったかな?」
 そう言いながら、ラウが歩み寄ってくる。途中で誰かに手を貸すように差し出した。
「キラさんには?」
 それがキラではなくラクスだ、とはわかっている。しかし、最近はずっと一緒の二人を見ていたから違和感を感じてしまう。
「カガリ嬢とバルトフェルド隊長に預けてきた」
 二人ならば大丈夫だろう。そう言ってラウは笑った。
「そうですか」
 少し残念そうな口調になったのは、自分が彼に会いたかったからかもしれない。
「アスランがいなければ、同行いただいたのですが」
 ラクスが苦笑とともに言葉を重ねた。
「そうですね」
 確かに、今のアスランは何をしでかしてくれるかわからない。だから、危険は遠ざけておいた方がいいだろう。
 それに、シンもキラに会いたがっていたし……と心の中だけで付け加える。
「もっとも、アスランにその気力があるかどうか、わかりませんが」
 ニコルが来ているから、とさりげなく続けた。
「あら。それは楽しいことになっているようですわね」
 ラクスが楽しげに言葉を返してくる。
「あと、ギルが何かを企んでいるようです」
 いろいろと、とレイは口にした。
「でしょうね」
 今回のことを聞いた彼がどのような反応をしたか。彼らにも推測できているのだろう。
「それについてもじっくりと話し合いをしてこようか」
 言葉とともにラウは後部座席のドアを開いた。そして、ラクスに乗り込むようにと促す。
「そうですわね」
 他にもいろいろと話し合わなければいけないことがある。ラクスはそう言ってうなずく。
「ミーアさんとも話をしないと……やらなければいけないことはたくさんありますわ」
 時間がどれだけ残されているのかわからないが、と彼女は続けた。
「できれば、少しでも早くアークエンジェルに戻りたいですし」
 その方がいいだろう。ラクスの言葉にラウも「確かに」とうなずいている。
「近いうちに、また、地球軍が動くだろうね」
 あれも今度はオーブ軍を本気で前に出そうとするだろう。彼はさらに言葉を重ねた。
「……キラさんが悲しまれますね」
 それは、と言い返しながら、レイはギアを入れる。
「そうならないように、あれこれと画策しているよ」
 今もウィルスを作っている、とラウは笑いながら言い返してきた。
「ようは、オーブ軍が動けなければいいのですもの」
 キラにしてみれば難しい問題ではないらしい。
「……ですが、集中しすぎては……」
「大丈夫ですわ。だからカガリとバルトフェルド隊長にお願いしてきましたのよ」
 二人とも、強引にキラをパソコンから引き離してくれるはずだ。そう言ってラウとラクスは笑う。
「なら大丈夫ですね」
 彼ら二人がそういうのであれば、とレイは納得する。でも、実際にそのシーンを見ていないから安心しきれないと言うことは否定できないが。
「いずれ、共同で行動することもあるだろう。その前にアスランを何とかしなければいけないが」
 レイの心の中を読み取ったかのようにラウが声をかけてくる。
「やはり、問題はあの人ですか」
 困ったものだ、とため息をつきながらアクセルをふんだ。
「少し揺れます。気をつけてください」
 念のために、と注意を促すとそのまま走り出す。その瞬間、何かが心に触れたような気がした。

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最遊釈厄伝